あぶなかった

いつものバスに乗っていたら
交差点で、横からすごい勢いでトラックが突っ込んできた。
運転手さんが急ハンドル急ブレーキで
間一髪でよけてくれたので
なんとか接触しなくてすんだ。
トラックはそのまま逃げ去った。
上野のすごいにぎやかな交差点でのできごとだったから
見ていた人たちはびっくりしたとおもう。

車内はほぼ満員で、お年寄りが多かった。
この路線は、いつもお年寄りが多いのだ。
ぶつかりそうになった瞬間、ほとんどの人が危うく転倒しそうになったが
奇跡的に、誰も怪我していないようだった。
運転手さんが「お怪我された方はいませんか?!」と
何度か声をかけると、車内のあちこちから
「大丈夫です!」と声が上がった。

バスが運転を再開すると、どういうわけか、みんな隣の知らない人と盛んに話をし始めた。
下手したら大事故になってたかもしれない瞬間を共有したことで、
車内に謎の連帯感が突如として生まれたかのようだった。
みんな一緒に死んでたかもしれないわけだから、まあわかるといえばわかる。
誰かと話すことで、無意識のうちに、
自分がまだ生きてるってことを、確かめてるのかもしれないと思った。
これがまさに運命共同体ってやつか。

自分は、別に誰かと言葉を交わすこともなく、
いつもの停留所で降りて、いつものスーパーで少しの鶏肉と野菜を買って、
うちに帰って簡単な夕食をつくってたべた。
生きててよかったーとか、特別な感慨を味わうでもなく、
いつものように普通においしかった。

普通ってすごいな。